本メールマガジンを企画し始めた当時、ちょうど1年前の1999
年末期 だったが、筆者は自分の投資業績が余りにも素晴らしいので、もし
かしたら「才能が ある」のではないかと錯覚に陥っていた。インベスタ
ー・ビジネス・デイリー紙をこ まめに読みはじめた時代でもあり、この新
聞が格付けしている最優良株を選択してい けば、「利益はほぼ保証された
も同然だ」といった楽観的な見方に浮かれていた。事 実9月末から12月
末までの3ヶ月で、自分のポートフォリオは何と3倍に増えてい たのだか
ら、多少自信過剰になったのも無理はない。一方、本当に優れた投資家は
下 がり市場でも利益をあげられる。ベア市場での成績が、「投資家に才能
があるのか否 かを証明する」という声も、当時良く聞こえてきた。才能の
有無を計り知るために、 自分は密かに、ベア市場の到来を待ち望んでい
た、と言っても過言ではない。
才能はなかったのだ:
下がり市場でも優良株を探し出す選択眼さえあれば、お金儲けができ
る。1年前のこ の想定はここではっきりと修正しなければならない。下が
り市場では、「値上がりを 予測した投資」は必ず失敗するという結論だ。
自分は才能がゼロだとは思わないが、 下がり市場で利益をあげるだけの知
恵も技術も持ち合わせていなかった、という事実 は明々白々である。
下がり市場を予測できればショートする。つまり値下がりを予測して株
を借り入れる。 値下がりしたところでそれを返却して、利鞘をかせぐ。シ
ョート投資の手法を使いこ なせれば勝利も可能だ。ショート投資の技術に
ついては、筆者は経験ゼロなので残念 ながらここでは解説できない。今後
もベア市場が続くなら、一つ研究してみようと思っ ている。
年始から数えて、ナズダックは25%以上の下落である。3月末のピー
ク時は 5000 を超えていたから、約 2000 ポイント(40%)落ち込んだ
計算になる。小生が注目 してきた銘柄は、テクノロジー産業の急成長企業
が主体だから、実際の値下がり比率 は市場平均よりさらに酷い。ナズダッ
ク3000 という水準は、歴史を振り返るとちょ うど去年の11月初旬のレ
ベルである。つまり、市場はほぼ1年間かけて上下往復し た。40%急騰
して、さらに40%下落、もとのレベルに戻ったわけである。
現金保持もアセット・マネジメントの一手段: さて、現在のマイナス
市場において、我々個人投資家はどうすれば良いのか。何が賢 い戦術なの
であろうか。小生は以下のように考える。過去7ヶ月を振り返ってみて、
もっとも賢い戦術は「株式投資は一時休止」して、保有資産を「現金の形
で維持して おくこと」だった。
大学でポートフォリオ・マネジメントの講座などを習得すると、必ず勉
強させられる のが資産配分(アセット・アロケーション)の理論だ。各種
投資物件毎に異なる見返 り率やリスクを計算して、投資家の年令、インフ
レ率だとか金融商品の見返り率を比 較検討して、100の資産をどう配分
するかを割り出す技術だ。例えば、20代の若 い年齢層は引退するまでに
長い年月があるので、多少リスクを負っても長期的に大き な成長を期待で
きるジャンク・ボンドだとか、急成長株を保有する。逆に高齢者は元 本の
目減りリスクを避けねばならないから、見返りが保証されている公社債な
ど比較 的安全な物件の比重を高める。
通常のアセット・アロケーション理論では、株式、公社債、そして現金
(マネー・マー ケット・ファンド)の3種類の投資商品間での配分が考慮
される。例えば、年令が2 0代の投資家には、株式65、ボンド30、現
金5といった配分が常識だ。一方、5 0才代以上の年齢層では、株式5
0、ボンド40、現金10といった方程式をよく耳 にする。こうして、1
00の資産をリスク配分しておけば、株式が下落してもボンド や現金がそ
のポートフォリオのボトムライン(元本)を支えてくれるという主張が成
り立つ。
現金か株式かの選択:
筆者は55歳の高齢者に属する年令だから、あまりリスクを負うべきで
はない。とい うのが常識だ。が、常識は大嫌いな性格だし、長生きする可
能性も高いし、忍耐心も 不足しているので、比較的若者向けのハイリス
ク、ハイリターンの投資を好む。従っ て、公社債にはあまり興味がない。
となると、残る商品は株式か、現金ということになる。現在マネー・マ
ーケット.ファ ンドは米国では恐らく年率5〜6%の利回りのはずだ。現
金で保持していても、つま りダウンサイドのリスク・ゼロの商品で、これ
だけの見返りを入手できるのだ。過去 7ヶ月間のアメリカ市場を予測する
ことはできなかったが、振り返って見る限り現金 保持の立場を維持するこ
とがベストだった。(今までは少なくともショート投資を考 えることもな
かったので、このオプションは無意味。今後は考え直すつもりだ。)
常に100%投資している理由はない:
顧客の現金を預かっている業界の専門家達には、長期間キャッシュを維持
することは 許されていない。従って、多少リスクが高くても株式市場に参
入せざるを得ないのだ。 我々個人投資家には、そのような制限はまったく
ない。何時でも100%現金化して、 それを3ヶ月でも6ヶ月でもあるい
は9ヶ月、1年でも維持していく自由を与えられ ている。この現金保持と
いう投資手段を採用しない理由はどこにもない。下落市場で は、現金化と
それを維持する戦略が最高の業績を産むのだ。是非、考えてみてくださ
い。証券会社のセールスマンはけっして、このようなアドバイスはしない
でしょう。 というのは、顧客が現金維持していたのではコミッション収入
が入らなくなるからで す。ケーブルテレビのCNBC に登場する専門家達の
間でも、100%現金のポジショ ンを主張する人には巡り会ったことがあ
りません。
ここだけの話し。「100%現金保持」は堅実なそして十分正当化でき
る投資ポジショ ンなのです。過去7ヶ月間の市場を振り返る限りその正し
さは一目瞭然です。(ショー ト投資は別格)今年の3月末にこのような勧
告を皆様読者に発することができれば、 自分は天才だと褒められたでしょ
うが。今からでも遅くない。
経験と学習が成果を産む:
これまでの損失を「損失」と見るのでなく、授業料だと考えればよろし
い。勉強させ てもらったのだ。今後の投資活動において避けるべきミステ
ークをくり返さないよう、 訓練してもらったと思うのが正しいでしょう。
「雨降って地固まる」です。ラフな石 も磨かれて、ダイヤのように輝くよ
うになるのです。今後も、あきらめることなく頑 張りましょう。
こうして筆者が100%現金化などを主張していると、突然市場が回復
しはじめる。 という可能性もあります。一般投資家の心理的なムードがど
ん底に落ち込むと、つま り最高に非観的になった時点で往々にしてボトム
が形成されます。特に、アメリカ大 統領選挙に関する奇妙な未決状況が今
後1〜2週間内に結論に達した時には、必ず大 きく値上がりする日が登場
します。その上昇基調がどれだけ持続するかは疑問ですが。
ボトムの予測は不可能:
何回もくり返し自分の失敗の原因を暴露するのは嫌なことですが、小生
の今年のレッ スンはボトムを予測して、くり返し市場に裏切られたことに
あります。何十年も市場 を勉強しているエキスパートでもボトムやトップ
を予測することはできない、と言わ れます。凡人にできるはずがありませ
ん。であれば、過去を振り返ってボトムが形成 されたことを後ろ向きに確
認すればよい、という結論に達します。つまり、多少の利 益を犠牲にして
も、確実に上昇基調が樹立されてから株式を購入しても決して遅くは ない
のです。常日頃と同様、こうした勧告は自分への戒めでもあります。
今年の冬は厳冬が予測され、暖房用のオイルの供給不足からインフレ懸
念も生まれて います。連銀は労働市場のタイトさから、賃金の高騰が産む
インフレを心配していま す。従って、まだまだ金利緩和の政策転換には至
らないでしょう。その上、企業収益 の鈍化が進んでおり、株価が過大評価
されているという印象も拭えていません。投資 家の心理的なムードもまだ
まだ楽観的な側面が残っているために、市場はさらに下落 するという予測
もたくさんあります。要するに明日の市場がどう動くか誰も読めない 状況
です。
毎日の株式平均指標が教えてくれる限り、7ヶ月間のベア市場が続いて
います。安心 して投資できる環境ではありません。今週末のリスク要因
は、1(最低)から10 (最高)だとすると、8〜9レベルのハイリスク
環境にあります。
小生は、現在まだ値上がりを期待して以下の株式を保有しています。い
ずれも最近買 い込んだものばかりですが、すでに3〜15%の下落状況に
あります。好機を狙って 売り払うつもりです。現在保有株:AMCC, CHKP,
MERQ, NTAP, SEBL, SDS 。
結論として「現金化による資産保護の可能性」を検討してください。あ
るいは、ショー トの手段を勉強するのも一案でしょう。が、これはロング
投資よりもさらにリスクが 高いことを念頭においておきましょう。歴史的
に株式市場は値下がりするより値上が りする頻度がはるかに高いからで
す。
さて、2週間後の11月末〜12月初旬に市場はどう動いているか、楽
しみですね。 その時まで、読者の皆様お元気で。
本文筆者の昨年度(12月末)の投資業績は、282 %でした。2000年1月1日
から今日 (11月17日終値)までの成績は - 69.23 % です。(自己資
本金額を基準にした 比率です)(来年度の所得税の推定額も四半期ごとに
差し引いています。一度にキャ ピタル・ゲインを払うのはしんどいの
で)。本無料メールマガジンの現在の購読者数 は、1,601人です。
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