負けました。完全に。今週は酷い市場の値動きでしたね。これを予測できていたら、先週末の金曜日、9月1日の後半、市場が上昇し続けている時にすべて売却して、現金化しておいたでしょう。ウォールストリートの専門家達も含めて、そのような先見の明をもった人はいなかったと思います。過去4日間の値動きは、凡人には予測できないほぼ対処「不可能」な状況ではないでしょうか。国籍の違い、言葉の能力、経験の有無に関係なく、この4日間については投資家は皆、損をしたはずです。投資せずに現金で資産を保持していた人々のみが、勝利を収めたと言えるでしょう。
ナズダックは4日間で6.6%下落しました。筆者が推薦し、保持していたテクノロジー銘柄は、P/E 比率が高い成長株ばかりですから、その下落度はもっと激しいものでした。我がポートフォリオは、今回の落ち込みを経験する前に4週間かけて15%ほど成長していました。が、その15%は、ほぼすべて4日間で消えて無くなったのでした。
厳しい市場環境:
今春の大暴落以来、その後遺症がまだ残っていると思います。3月から5月にかけて大
火傷をした連中がたくさんいるわけで、彼ら、彼女らは、市場が多少回復して損得ご
破算になったところで、売却に出ます。その「売り」の圧力に耐えられず、市場の平
均値が引きづり下ろされるのでしょう。ベア市場が酷ければ酷いほど、その過激度に
より、回復には時間がかかるという見方が成り立ちます。そうしたオーバーヘッド圧
力が膨大な上に、金利引き上げの環境下で、企業の収益率が予測を下回るのではない
か、というネガティブな読みも影響しているようです。
向かい風には逆らわない:
前回描写した「空飛ぶ鷹」のように、向かい風には逆らわずに、素直に巣に戻り、傷
をいやしましょう。筆者は、楽観的な気分で借金(マージン取引)しながら、有望株
を買っていたのですが、ご存知のように火傷が続きました。来る1週間はできるだけ
「売り」に出て、現金化して資産保護に回るつもりでいます。落ち込み市場がどこか
で底をついて、上昇が始まるかもしれない。その「上昇気流に乗り遅れたくない」、
という欲望も一方にはありますが、市場のトップやボトムは予測不可能です。多少タ
イミングが遅れても、下降気流に圧迫されるよりはまし、というものです。
筆者の失敗の主な理由:
1.マージンを利用して、どん欲に営利追及、積極的過ぎた。リスクの増大を知りな
がら、そのコントロールに遅れた。
2.買い時のタイミングに関して、必ずしも上昇株が値上がりしている時でなく、優
秀だと思った株が値下がりしている時に飛び込んでいる。「安い」と思って飛びつい
たものが、どうしたことか「もっと安くなる」。つまりタイミングが間違っている。
という、反省をしています。これもご存知のように、過去にも繰り返し警告してきた
極めて一般的な間違いなのですが、どうしたことか筆者は自分で発した警告に素直に
従わない傾向があるようです。これは投資以前の問題、心理的、性格的な弱点ではな
いかと、最近自己分析を新たに始めました。「危ない」とわかっていながら、下がり
続ける株に手を出す。これは、危険を追い求め、そのスリルを楽しむだけでなく、過
去に何回も繰り返した失敗、馴染みになった失敗に別れを告げられない心理症状。言
い換えると「成功への恐怖感」を無意識のうちに抱いていることになります。生来失
敗ばかりしている人が、成功できないのは、多くの場合「成功」を信じられず、また
成功を恐れて、無意識の内にファミリアーな失敗体験を作り出す、というパターンが
あることは知られています。もしかすると、自分もこの「成功恐怖症」に陥っている
のではないかと。今後の行動を見つめながら、何とか抜け出るつもりです。読者の方々には、このような奇妙な習慣を身に付けた方はおられないでしょうが。
失敗から学ぼう:
成功ばかりしている人もいないでしょうから、ここで過去の失敗から学びとる訓練を
もう一度、繰り返しましょう。
1)収益の伸び率は、自分が求める高いものかどうか。伸び率は一貫性のあるものか
どうか。過去2年〜3年間程度の売上高伸び率、利益の伸び率を確認しましょう。
2)株価の値動きチャートは健全な姿を見せているか。上下振動の激しいものは、不
安定な株であり、リスクも高くなります。
3)その銘柄が活躍する市場は成長産業なのか。その市場でのリーダー格の会社であ
るか。商品やサービスには、他社にない優れた特性があるかどうか。
4)チャートのどこで購入し、どの時点で売却したか。そのタイミングの間違いを研
究してみよう。将来同じミスを起こさないためには、過去の成功例、失敗例をチャー
トでプロットすると、自分のパターンが浮き彫りになってくるでしょう。
5)値動きチャートにおいて、株価が底値からはい上がり、以前の高値を更新するか
どうかというピーク前後がベストな買い時なのですが、それより早くまだ底辺に近い
所、高値より低めの時に購入していないか。
6)値下がりしている株には手を出さないこと。小生最大の失敗パターンがここにあ
ります。
7)取引高(ボリューム)にも注意する必要があります。ボリュームが膨れ上がって
いる時は、機関投資家など大手が参加していると思って間違いありません。ですから、値下がり株のボリュームが大きければ、大口投資家が売りに回っていることが読み取れます。逆にボリュームが膨張して、値上がりしている株は、大手投資家が買い足している銘柄だということになります。
8)先週も言及した、投資の3本柱、銘柄と、タイミングと、そして第3の要素、市
場動向。この最後の「市場動向」は、予測は難しいものの、毎日、毎分、毎秒、ダウ
平均値やナズダック指標の値動きから、健全なのか、不安なのかは判断できます。ま
た、ブルーチップと呼ばれているビッグ・キャップ株、リーダー格の銘柄の値動きも
参考になります。自分が注目している銘柄だけでなく、周囲の動向にも同時に目配り
して、それぞれの瞬間の市場の温度を測定することが肝心です。
9)まだまだ不安定な市場が続きそうです。一度買い入れて20%以上の値上がりをし
たものは、値上がりを続けている内に売ることを考えましょう。下落し始めた時には、利益が消えている可能性があります。誰も値動きのトップを予測することはできないのです。特に我々個人投資家には無理な話ですから、多少早すぎても利益をあげたら値上がり市場で売り払うことです。
といった具合に、クラシックな「BUY AND HOLD」戦略、つまり優良株を購入したなら、市場の浮き沈みに揺られることなく、長期間淡々と保有する。という投資スタイルは、小生が推薦するものではなく、また当世にはあわないスタンスのように思います。もともと、オンラインで株式投資をする理由は、市場の値動きに敏感に対応する技術的な能力を活用することから始まっています。コンピュータとインターネットの技能を駆使して資産運用に努めるからには、上がり市場で買い込み、下がり市場に襲われる前に売り払う、という身軽な投資態度こそが、道具に見合った姿勢だと言えます。
「投機的だ」、「機会主義者だ」、「デイトレーダー」だと、あたかも長期投資家が
優れていて、われわれ身軽に素早く動く者は、低劣な「ばくち打ち」だという風潮が、アメリカでもあります。そんな世間の声(雑音)には、耳を貸さないことです。業績が良ければ勝利者、悪ければ失敗した者になるのですから。投資に関するかぎり、正否の判断基準は業績だけです。
注目銘柄:
先週は、NTAPとMERQの2社を推薦銘柄として取り上げました。が、もちろん両者とも優良株ではありながら、市場の下降圧力に流されて値下がりしました。市場が再び回復すれば、この2社はやはり「買い」の考慮に値いするでしょう。今回は、次の2社をご紹介します。
1)I2 Technologies (ITWO): アイ・ツゥー・テクノロジー社。ビジネス用のソフト
ウェアの会社で、特に最近は電子商売(E・コマース)用のソフトで売り上げを伸ば
しています。例えば、先週はダイムラー・クライスラー、トヨタ、フォルクスワーゲ
ン各自動車メーカーのオンライン・サイトを改善する仕事を受注しています。過去4・四半期の売上高成長率は、それぞれ前年同期比で53%、54%、58%、84%と順調に伸びています。また利益の成長率は、各四半期ごとに200%を越える伸び率を獲得しています。
2)Technitol Inc. (TNL):テクニトール社。電子工業部品の会社で、6月初旬以来
株価は2倍に跳ね上がっています。売上高は20%台を高めに推移し、利益成長率は過
去4・四半期に63%、60%、111%、そして最近の四半期は141%の延びを示しました。
筆者が注目している銘柄中では、新参社の一つです。
買い時のチャンスと市場動向をにらみながら、投資の勉強に励んでください。多くの
場合は、スクリーンをにらみながら何もしないのが、最も正しい行動だという気がし
ます。
我がメイルのアドレスは、[email protected] です。ご質問、ご感想、アドバイスなど
お寄せください。できるだけ即座に回答を試みます。また我がウェッブサイト (
www.odani.com )では、過去数ヶ月分の本誌バックナンバーをご覧になれます。
本文筆者の昨年度(12月末)の投資業績は、282 %でした。2000年1月1日から今日
(9月9日終値)までの成績は - 37.88 % です。(自己資本金額を基準にした比率です)(来年度の所得税の推定額も四半期ごとに差し引いています。一度にキャピタル・ゲインを払うのはしんどいので)。本無料メールマガジンの現在の購読者数は、1,614人です。(前回比、3人増加)
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