ご無沙汰いたしました。夏休みを利用してキャンピングに出かけた
り、コンピュータの新ソフトを学習したりと、実益はないものの、心身ともに将来の
成長への下準備に忙しい夏を過ごしました。読者の皆さまのサマー・バケーションも
楽しいものであられたことを祈って、秋の投資シーズンに向けて情報交換を再開しま
しょう。
9月以後の市場分析:ウォール・ストリートの有名なアナリスト達は、大部分が口を
揃えて、過去数年続いたブル市場は終わりに近いと予見しています。年率で20〜30%
もの上昇を示したここ数年の株式市場は例外的なもので、今後はより正常な年率10%
程度の成長に落ち着くだろうというのが大方の見方です。
予測は予測。当たるかもしれないし、外れる可能性もあります。我々個人投資家は自
己が保有する銘柄の成長可能性を研究することに徹底しましょう。市場が横ばいでも、年間に2倍、3倍と急騰する優秀銘柄は常に控えています。その数は減っていくかもしれませんが、平均以上の業績を上げる企業は常に存在します。それらを発見して、良いタイミングをつかみながら売買していく、それが投資家としての活動目標でしょう。
この夏、背中にバックパックをしょって、山奥を徒歩で旅しながら、一つ、二つ気が
ついたことがあります。ニューハンプシャーのホワイト・マウンテン地域。標高5000
フィートもある山岳をよじ登り、頂上に到達すると、そこは谷間から吹き上げる強風、樹木は育たたず、青緑の苔に覆われた大きな岩石がそそり立つだけ。その岩山に立ち、眼下一面に広がる深緑の樹海を眺める爽快さ。山登りの極限。大空には数羽の鷹(hawk)が舞っていました。強風には逆らわず、逆にそれをうまく利用しながら、鷹は翼を広げて左右に流れるように風を切り、また突然と急降下して、餌食を狙っています。そのエレガントな飛行は、強靱な体力と、明晰な頭脳を思わせるものでした。
夕暮れと競争しながら山を下り、樹林の間に発見された小さな低地にテントを張り、
夜に備えます。疲労した足を休め、簡易食で腹を満たし、日没とともにテントに潜り
込み就寝。膀胱が一杯になり、真夜中には小便に立ちました。ヒヤッとする冷たい大
気を肌に感じながら、真っ暗闇で用を足す。寝床に転がる前に、あごを突きだして黒
い大空を見上げると、そこには宇宙一杯にキラキラと輝く星の群れ。そのダイヤモン
ドのような星の数と輝きは、都会ではとても見ることのできない格別おいしいご馳走
でした。人工照明のない僻地での星空は、人間の小ささを確認させてくれます。
株式投資にも、夜中の星空を眺める余裕と、自分を取り巻く金銭損得の「ささいさ」
を意識できるバランス感覚が必要です。そして、大空を舞う鷹のように、大きな流れ
には抵抗することなく、逆に市場動向をうまく利用して、上昇気流には乗りきる。風
向きが変わり低気圧がやってきそうな時には、素早く手を引いて、市場の落ち着きの
回復を待つ。そうした身軽さ、決断力の素早さが求められるようです。山奥のキャン
ピングは、そんなレッスンを授けてくれました。
インターネット革命の2大潮流:アナリストやポートフォリオ・マネージャー達が発
する、推薦の言葉だとか、評価下げ(ダウングレード)のニュースには、通常筆者は
注目していません。たいていが自分たちのポートフォリオに都合の良い意見を流すだ
けで、短期の利益をあげるための手前味噌、「戯言」だと読んでいます。が、一人だ
けかなり信頼できる分析をする専門家がいます。ロジャー・マクナミー(Roger
McNamee)というカリフォルニアのシリコン・バレーで活躍するアナリストで、自分
のファンドも運営、有名なベンチャー・キャピタル企業のパートナーでもあります。
最新のマネー誌に、マクナミーは次のような興味深い分析を紹介しています。現在進
行中の技術革命は、各種膨大な種類の技術によって支えれられているが、なかでも今
後数年間特に注目されるのは以下の2つの潮流であると。
一つは、情報やデータへのアクセスをリアルタイム化するソフトウェア。ご存知のよ
うにインターネットの利用者がもっとも強く求めるのは、スピードである。電子商売
にしてもオンライン取り引きにしても、情報の交換、アクセスがリアルタイムである
か否かで、価値が大きく異なる。情報へのアクセスと処理、その通信スピードの高速
化をはかるソフトウェアへの需要が急増していることは容易に想像がつく。そのよう
なソフトを開発している会社として、マクナミーは以下の会社をあげている。
Agile(AGIL), Inktomi (INKT), Akamai (AKAM), Epiphany (EPNY), Calico (CLIC),
Pivotal (PVTL)。
第2の注目すべき技術は、インターネット上での情報やデータの流れの障害となるボ
トルネック(交通渋滞部)を取り除く技術だ。この分野でもっとも有名な銘柄は、周
知のシスコ・システムズ社(CSCO)である。他の銘柄として、マクナミーは、以下を
あげている。Juniper (JNPR), Sycamore (SCMR), Redback (RBAK), Foundry(FDRY),Copper Mountain (CMTN), Extreme Networks (EXTR)。これらの銘柄は、いずれも歴史の浅い新進のベンチャー企業、利益獲得能力はまだ証明できていない。ハイリスクだが、当然リウォードも大きくなる可能性を秘めている。読者それぞれのリスク受け入れ能力を確認しながら研究してみてください。
現在筆者が注目している2大優秀銘柄:マクナミーの推薦銘柄は、2,3の例外を除
いて、筆者の投資スタイルにはリスクが高すぎます。が、同じようにインターネット
の効率化を促進している、より成熟度が高いテクノロジー銘柄があり、以下の2社を
紹介します。
1)MERQ (Mercury Interactive Corp.) :マーキュリー・インターアクティブとい
う会社で、ソフトウェアの信頼性テストをする会社です。過去5年間利益は平均毎
年54%も延びている超優秀会社。1年前には、売り上げの20%をインターネット関連
の商品/サービスであげていましたが、最近は全売上げの75%をインターネット分野
で稼いでいます。
ウェッブサイトを設けて、そこで取り引きする電子商売企業にとって、そのウェッブ
サイトがダウンするという技術上の故障は、死活問題になります。単なる技術上のト
ラブルではなく、より根本的な企業収益を左右する重大要素です。そこで、自社のウ
ェッブサイトやネットワークが24時間、週7日、年365日、常に正常に稼働していることが成功の必須条件となります。MERQ のソフトやサービスが、そんな信頼性と、互換性、システムの安定を提供してくれる訳です。
過去4・四半期間、売上高は前年同期比で、55%、47%、61%、64%と延ばしています。利益は同様に、50%、55%、83%、75%と、超一流の伸び率です。ここに値段は高くても購入に値する銘柄があります。
2)NTAP (Network Appliance Inc ) :ネットワーク・アプライアンスというネット
ワークに付随するデータ貯蔵機器、データ・アクセス機器のメーカーです。データ保
管を目的としたサーバーで有名なのは、EMC 社です。NTAPはこのライバル先輩会社
の10分の1の規模ですが、1992年に創立されて以来急成長を続けています。過去5年
間の利益成長率は、平均すると何と毎年79%になります。通常のデータ保管機能はメ
イン・サーバーに組み込まれていますが、NTAPの技術ではこの保管機能をメインのサーバーから隔離して、データ保管専門のユニットをオファーしている所に特徴があります。さらに、ユーザーが求めるデータをできるだけユーザーに近い所で保存しておく、キャッシェ技術もNTAPの強い所です。
過去4・四半期間の売上高は、前年同期比で80%、90%、100%、120%と3桁に至る勢いです。利益も同様に、60%、73%、83%、133%と、これも他社の追随を許さない素晴らしい成績です。
NTAP が得意とするネットワークに付随するメイン・サーバーとは別のデータ保管機
器の市場は、去年8.6億ドル、今年は約2倍の17億ドル、そして2003年には66億ドルに成長する有望分野とされています。世界最大のユーザー数を誇るヤフーのE・メイ
ル・システムは、NTAPのデータ保管機器を利用しています。
オダニ・アキラの投資基本原則(前回に続いて、自分のためにも再確認)
1.保有する銘柄は6〜8件に抑える。どんな場合でも10件以上には増やさない。
その理由は、まず第一に銘柄数が増えると、それぞれの銘柄に関する知識が浅くなり、注意が散漫になる。各社の値動きだとかニュースを十分にモニターできない。さらにもっと重要な理由は、市場が急変した時に対応が遅れる。素早くすべてを現金化することができない。第1銘柄を上手く売り払っても、25銘柄も持っていると最後の第25銘柄に到達したときには、市場はすでに大暴落していたということになる。
新しく取得したい銘柄が現れたなら、既存保持銘柄中の一番弱いものを売り払い、合
計銘柄数は一定に維持すること。
2.マージン投資はよほど自分の判断に自信があり、また市場が健全な上昇基調にあ
る時に限る。マージン取り引きのリスクは株式投資のリスクを倍増する。
3.銘柄の選択も大切、買い時のタイミング、売り時のタイミングも重要だ。が、こ
れだけでは成功条件は十分でない。「市場の動向」を忘れるな。どれほど優秀な銘柄
でも、市場全体が下向きの時はたいていが値下がりしてしまう。株式投資の3本柱と
して記憶しておこう。第1は、銘柄、第2はタイミング、そして第3が、市場動向で
ある。
4.今までにも強調してきたが、ロスを出すものは、できるだけ早く売り切る。これ
はリスクから自己資本を守る「保険」だと信じて、有無を言わずに実行することだ。
我がメイルのアドレスは[email protected] です。ご質問、ご感想、アドバイスなど
お寄せください。できるだけ即座に回答を試みます。また我がウェッブサイト (
www.odani.com )では、過去数ヶ月分の本誌バックナンバーをご覧になれます。
本文筆者の昨年度(12月末)の投資業績は、282 %でした。2000年1月1日から今日
(9月5日終値)までの成績は - 27.27 % です。(自己資本金額を基準にした比率です)(来年度の所得税の推定額も四半期ごとに差し引いています。一度にキャピタル・ゲインを払うのはしんどいので)。本無料メールマガジンの現在の購読者数は、1,611人です。(前回比、1人増加)
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