ニューヨークはアメリカ独立記念日(火曜日)を前にして、完全に夏休み 気分です。抜けるように高く青い空の下で、乾燥した涼しい夏の風に肌を癒される快適さは何とも言えません。読者の皆様も、暑い夏を迎えて気分一新、下半期に向けての投資戦略を練っておられることと想像します。先週は 日本在住の読者スズキ様から、P/E 比率に関するご質問を頂きました。今回 は、このP/E 比率についての考え方を解説してみたいと思いますが、先ずその前にこれまでの6ヶ月、2000年前半を振り返ってみましょう。
投資家にとっては厳しい上半期:
ダウ工業平均値は、1月1日以来 - 9.1 % の落ち込み。S & P 500 株指標は、- 1.0 % の下落。そして、ハイテク株が多いナズダック指標は、-2.5 %の落ち込みである。という具合に主要指標はいずれもマイナス成長。信用取引(マージン)をしていたならば、大多数の投資家は金利を支払いながら赤 字を出してきた6ヶ月だったということになる。上昇すれば興奮して楽しい が、下落が続くと失望したり自信を失ったり、少なくとも楽しいことはない。一言で言えば、極めて厳しい上半期だった。勿論、利益を上げた方もあろうが、もし皆様が筆者同様赤字を出していたなら、それは「例外ではない」、「大抵の人が損をしている」事実に、多少の慰めを発見してください。
投資活動というのは、他のあらゆる技巧と同様、一夜にして上手になるも のではありません。画家やスポーツマンや、ビジネスマン同様に、成功する には長年の訓練と忍耐を必要とします。半年間続いた市場の攻撃に敗けているようでは、大した投資家にはなれない。多少の赤字ぐらいで泣きわめくのは止めて、歯を食いしばって頑張りましょう。勿論、気楽に、余り真剣にならないでください。所詮はお金ですから。「水のように何処かに流れてい る」といった、距離をおいた態度が大切です。
厳しい環境でも2倍株、3倍株はある:
「過去は過去」、過ぎ去ったことはさておいて、これからどうするか。下半期の戦略を立案する前に3~4~5月期の暴落後、特に6月の優秀銘柄の値動きを見てみましょう。自分が注目すべき銘柄として、ウォッチ・リストに上 げてありながら購入のチャンスを失ったもので、値段が2倍、3倍になったものがあります。SDLI については、今までも推薦銘柄に上げていましたし、自分も満足できるゲインを獲得できた優秀銘柄の一つです。光ファイバー通信の効率を高める通信機器のメーカーで、5月の末には過去52週のピーク値(3 月上旬)を飛び越えて、4週間で200ドル前後から300ドル前後へと値上がりし ました。
これよりもさらに優れた成績を上げている銘柄が、自分のレーダー範囲内に3件あります。先ずはキースリー・インストルメンツ(Keithley Instruments = KEI )。4月、5月とほぼ横ばいで、6月下旬に52週のピーク値($30) を更新して、上昇し続け現在 90 ドル前後、つまり3倍に増加しまし た。第2の超優秀銘柄は、テクニ社(Techne Corp - TECH )。バイオテクノロジー業界に各種テストキットを販売する医療機器メーカーに所属するもので、これもチャートを見ると、4月~5月は横ばいで、5月の末にピーク値($80)を更新して上昇し始め、現在$130前後です。1ヶ月余りで60%以上の上昇です。筆者が取り逃した第3の超優秀銘柄はトールグレイド社i Tollgrade Communications =TLGD )で、インターネットのインフラ・ソフトの会社です。前2社と同様に、6月初旬に過去1年間の最高値を更新して、60ドル前後から現在の130ドル前後へと、1ヶ月で2倍以上(116%)の値上がり を見せています。
超優秀株の探し方:
今からご説明する情報には価値ありです。眼を平らにして良く熟読してく ださい。上記4銘柄、SDLI, KEI, TECH, TLGD がこの目覚ましい「値上がりする前に、発見する」方法はあるのか。5月の末の時点で、それまではフラットで値段が少しも上がっていない銘柄が、その後1ヶ月余りの間に50%、100%、150%も値上がりする可能性を嗅ぎつける手法というのは、存在する ものなのか。筆者がこの週末、野外は天候が素晴らしくてバーベキューでも楽しめるはずなのに、事務所にこもり、数時間かけて研究した結果、これからの超優秀銘柄を発見する方法を突き止めました。ご披露しましょう。
最高値を更新しようとしている銘柄:
ここで上げた過去の優秀銘柄の値動きチャートとその取引量の推移を分析すると、共通分母が発見されます。52週の最高値を更新した前後から、つま り値上がりが始まる時点から、取引量が急増していることが読み取れます。 大手機関投資家が「買い」に回っている銘柄だからです。数千万ドル、数億ドル単位で買い物するミューチュアル・ファンドのマネージャー達が、経営 者や業界内部の専門家を尋ね、あらゆる統計数字を分析し、長年の経験を基礎に、「投資に値する」と判断した銘柄です。こうした大手が買いに出ている銘柄を、「値上がりが始まる時点で捕まえる」、つまり「52週最高値に近いか、これをクリアする寸前に」、買い込むことです。これが秘訣のようです。自分も試してみます。
次回の有望銘柄:
今後数ヶ月間に50%、100%の値上がりを期待できる銘柄を、上記手段で検索してみました。以下の銘柄が上がりました。本年初頭からの6ヶ月間の値動きチャートを検索して、ご自分で確認してみてください。
SEBL: 6月初旬に140ドルの最高値を更新後、しばらく横ばい状態にあり。 150ドル前後が買い時と見る。過去にも何回か紹介した、時勢に乗っているソフトウェアの会社です。
CAMP: 今までご紹介したことのない新規銘柄ですが、California Amplifier という会社で、マイクロウェーブのシグナルを受信するアンプ、アンテナなどのメーカーです。チャートをご欄になると、50ドルの最高値に向けて直進中、もうすぐ更新寸前といった買い時のチャンスを見せてくれています。
NT:
筆者が得意とする中堅企業ではなく、ビッグキャップ(巨大企業)のカテゴリーに入る大手通信機器、ネットワーク会社、ノーテル・ネットワークス社。これも3月後半に最高値の70ドルに達し、その後テクノロジー株の下 落波に飲み込まれ暴落。現在70ドル前後を確認している、何時最高値を更新するかという局面にあります。これも、高値を更新できればかなりの値上が りを見込める優良株でしょう。
他にも数件ありますが、いずれも大きな値上がりを保証することはできませんから、銘柄紹介はこの程度にして、優秀銘柄を探し当てる基本になる方程式をもう一度確認しましょう。
1.利益、売上高が、少なくとも30%以上、数四半期にわたって上昇している業績の良い会社。
2.本年3月のピーク時の最高値を乗り越えようとしているもの。つま り、大手機関投資家が買い集めている銘柄。
この2条件にまとめられます。
P/E 比率の神話:
さて、本題に入りましょう。スペースの関係で短くまとめます。一株あたりの利益額と比較した株価、つまり利益を基準にして、株価が正当なものか、過大、過小評価されているかを判断する基準をP/E 比率(Price/Earnings Ratio )と呼びます。P/E 比率が高い銘柄は、過大評価さ れている可能性あり、逆にこの比率が平均より低ければ過小評価されている、と判断するのが常識です。過去20年、30年間の間に発表されたあらゆる
投資に関する教科書が、「P/E の低い株をさがす」ことの智慧を教えてくれています。筆者も、去年の9月頃までは、この比率が低い業界の優秀銘柄、例えばアパレルや小売業の銘柄だとか、銀行株、エアラインなどを購入してきました。P/E 比率が低いから、「安い」という判断をして購入したわけです。が、現実には、こうした安い株はその安い値段から抜けきれず、市場が上昇していても横ばい、市場が横ばいだとさらに値下がりするという情けなさを、何回となく経験させられました。P/E 比率が低い銘柄の過去2,3年の業績を確認してみてください。大抵はその成長率が他産業より低いか、マイナス成長している会社でしょう。もし、成長率が一貫して35%を越えていながら、P/E 比率が15だとか20という低さであれば、これはバーゲンを発見したわけで、秘かに買い込むことをお勧めします。そんな銘柄が見つかったら、内緒で是非小生にも教えて下さい。
要するに、優秀な業績を納めている銘柄は、当然のことながら値上がりも 早く、P/E 比率も平均より高くなる訳です。確かに高すぎると思われるかも しれませんが、現実に値上がりを続けている銘柄は、すべてP/E が高いことを認知する必要があります。言い換えますと、この2,3年間の市場の値動きは、過大評価されていると見られる高P/E 銘柄がさらに値上がりしている 訳です。株式投資の基本は、利益を獲得することですから、先ずは値上がりの可能性が高いものに注目する。それがたまたま、高いバリュエーションを受けている銘柄だというのが現実です。将来は、市場のローテーションにより、過小評価されている銘柄、つまり低いP/E 銘柄に人気が集まる日がやってくるかもしれません。
現在のハイスピードのハイテク産業崇拝環境では、P/E 比率に過大な重 みを与えるのは危険です。代りに成長率、利益率、売上増加率に着目してく ださい。つまり、現在の環境ではP/E 比率はほぼ無視せざるを得ないことになります。この高成長株崇拝の環境は、さらに4~5年は続くと見ています。スズキさんのご質問にお応えしたつもりですが、さらにご意見あればお聞かせください。
保証はもちろんできませんが、この高成長株注目型の投資戦略を試してみ てください。例によって警告ですが、市場が下降し始めたなら、そして購入 株が購入価格から落ち始めたら、それらが大きな赤字になる前に身軽に手放すことをお忘れなく。なかなか実行が難しい戦術ですが、自分でコントロールできる保険だと思って、「ロスが出たら、それを最低限に抑えるよう」自 己鍛練してください。
皆様読者の夏の投資が、楽しいものになりますように。
我がメイルのアドレスは、[email protected] です。ご質問、ご感想、アド バイスなどお寄せください。できるだけ即座に回答を試みます。
本文筆者の昨年度(12月末)の投資業績は、282 %でした。2000年1月1日から今日(6月30日終値現在)までの成績は -21.56% です。(自己資本 金額を基準にした比率です)(来年度の所得税の推定額も四半期ごとに差し 引いています。一度にキャピタル・ゲインを払うのはしんどいので)。本無 料メールマガジンの現在の購読者数は、1,615人です。(先週比、増減なし)
お知らせ:本年秋、10月~11月頃に、筆者は東京・六本木にて半日の対米投資講座セミナーを開くことを計画しています。ご興味のおありの方は、その旨 希望するテーマなど、ご一報ください。参加者が少なければ中止しますが、できれば一度チャートなどを見せながら直接読者の方々にお会いして、解説できればと希望しています。
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