先週末号の発行が遅れたことをお詫び申し上げます。ほぼ持ち株は売り払い現金化した状態にあり、その後も市況の好転を示す材料は少なく、読者の皆様に是非伝えたいという強いメッセージもなく、また意欲も消沈していたというのが正直なところです。
現状は明らかな下げ市場(ベア・マーケット)にあり、その読みは変っていません。連銀による金利引き上げの発表が5月16日(火)に予定されてい ます。引き上げ率が25ベーシス・ポイン ( .25% )なのか、50ベーシス・ポイント(.5% )になるのか、専門家の間で議論が沸騰しています。いずれにしろ、この連銀発表を乗り越えてもさらにインフレの再発懸念は残りますので、6月末に予定されている次の連銀発表に向けて、今までと同様の金利動向を巡る不安が続くことが予想されます。
株式投資で成功するための2大判断テーマ:
先ずは優秀な銘柄を選択すること。次にもっと重要なことは、株式市場が現在どういう状況にあるのか、上げ市場(強気市場)なのか、下げ市場(弱気市場)なのかを判断することです。アメリカでは上げ市場をブル・マーケット、下げ市場をベア・マーケットと、動物の牛と熊に比喩した表現を使います。ナズダック市場は3月上旬のピーク以来すでに30%近い下落を見ていますので、これは明らかなベア・マーケットです。ダウ工業平均値が20%以上下落した過去のベア・マーケットを振り返ってみますと、1946年以来合計11回あります。1946年から49年まで続いた2年近い下げ市場から、1987年の8月から10月までのベアまで、長いものでは2年、短いものでは2ヶ月位の期 間、下げ動向が続くようです。
つまり、一時的に数%落ちるような市場のコレクション(修正)と異なり、20%以上もの下落を示す弱気市場は、回復するまでかなり長引くということが体験的に判断できます。下げ市場では、どのように優秀な銘柄を買い込んでも値段は下がる可能性が高い訳で、投資には向いていません。インベ スターズ・ビジネス・デイリー紙(今後はIBD紙と略)によりますと、ベア・マーケットでは4銘柄中の3銘柄は市場平均値と供に下落するということです。弱気相場には逆らわずに、大切な資本は出し控えて保存するに限ります。今回のベアは3月初旬のピークから計算すると約2ヶ月は経っていますから、一応回復の可能性が生まれる時期には入った訳です。多数の銘柄が上昇し、かつ取引量が膨張する日が2回ほど繰り返されたなら、本格的なブル・マーケットの再生だと見て良いでしょう。
一方、熊が退散して雄牛(ブル)が登場すると、過去50年間の事例ではその上昇気流は16ヶ月から95ヶ月も続いています。一般的なパターンとして、下げ市場は短い時期に限られ、上げ市場が長期間続くということになります。
横から眺めているのは忍耐のいることですが、筆者は次回のブルがやってくるまでは観測者に徹底する所存です。
ショートは控える:
ベア・マーケットでは、大部分の株が20%〜50%も下落する訳ですから、ロング投資の逆を取って、値下がりを予測する投資手法(ショーティング)が考えられます。つまり、値下がりにかける投資戦略です。この手法で成功するには、市場のピークとボトムをかなり正確につかむことが必須であり、ほぼ不可能に近いと思われます。しかも、歴史的にベア・マーケットは比較的短い時間帯でしか起こらない訳ですから、ショートして成功する可能性はさらに狭まります。
下がる株を買い足すのは間違い:
ある銘柄について、50ドルは適切な値段だと思い買いを決める。ところが、数日内にこの株は40ドルまで下落してしまう。20%の落ち込みだ。50ドルでも「買い」だと判断したのだから、40ドルならさらに魅力的な値段だという見方も成り立つ。自分の判断に自信があれば、そこで買い足しを決定。平均購入価格は45ドルに下がる。この手の2段階、3段階値下がり株を追いかける購入方法を「アベレージング・ダウン」と称する。つまり、買い足す毎に平均購入価格が下がっていく。一時的にはバーゲンを見つけたような錯覚に陥るが、現実には弱い株に資金をつぎ込んでいることが多い。「良いお金で悪いお金を追い回した」といった表現もある。誰も自分の判断の過ちを認めたくはない。膨大な赤字を前にして「自分は長期の投資家だ」と頑張りたがる。下がったものは上がるまで「待つ」という姿勢だ。
誰でもやらかす投資のミスである。下がるものを売らずに保持しておくという判断は、決して讃めたものではない。赤字を出しても売り切り、その残った現金をより健全な銘柄に移動する方が正しい。
下げ市場での行動指標:
まとめ
1)現金を保有しながら、市場の方向転換を待つ。
2)「待つ」という選択も投資戦略の基本である。
3)ショート投資は勧められない。
4)アベレージング・ダウンも控えよう。
資金を運用せずに現金で保持しておくという戦略。筆者にとっても比較的新しい智慧ですが、下がり市場では得策だと信じています。現金は目減りしないからです。市場がどんなに落ち込んでも、少なくとも現状を維持できます。忍耐強く待つというのは、大人の攻撃手法でしょう。これもいずれ、市場動向がその正誤を教えてくれるでしょう。
待つ間、次のブル市場をリードする優秀銘柄を探すことにしましょう。過去に推薦してきた銘柄の中にも、多くの宝石が潜んでいると思います。
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本文筆者の昨年度(12月末)の投資業績は、282%でした。2000年1月1日から今日(5月11日現在)までの成績は - 23.78 % です。(自己資本金額を基準にした比率です)(去年のキャピタルゲイン・タックス額を差し引きました)。
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