證券会社に預けている自己資本を担保に、借金してそれを投資に向ける手法をアメリカではマージンと呼ぶ。日本の信用取引にあたる投資手段だ。借金であるから当然金利がかかる。市場が上昇気味で、また自分が選択している銘柄が順調に値上がりしている時は、自己資金以上の見返りを期待できる。金利分を差し引いても利益になる。他人のフンドシで相撲を取れる訳だ。
逆に、市場が落ち込んでいる時に借金をしていると、その金利負担に加えて自己資本が減るだけでなく、借金した資本も目減りして、それを自己資金で埋め合わせなければならない。損失は、市場の比率以上に大きく膨れ上がる。その程度の意識をもって、筆者は過去4〜5年間マージンをほとんど許容限度ぎりぎりまで利用してきた。證券会社のマージンだけでなく、各種金融機関がオファーしてくれるクレジット・カードまでフルに活用した時代もあった。年間にして金利を10%〜15%支払っても、投資が20%〜50%増えてくれれば、ここでも他人のフンドシでお金もうけをできた。それだけ自信があったのである。
過去にも市場の落ち込みは数回体験してきた。例えば、去年の8月から10月にはやはりナズダックは20%前後下落して、筆者のマージン口座は現金が許容限度を下回り、證券会社から電話だとか電報が届いたものだ。最近はE ・メイルでも知らせがくる。勿論、チャールズ・シュワッブの我が取引用ウェッブ・サイトにも、現在$000不足しているから、充足するようにとの督促メッセージが登場する。通常は3日間の間に追加の現金を送金するか、自分の持ち分株を売却して現金化しなければならない。マージンの現金不足の督促を受けてから株式を売却する場合は、大方大きな赤字を出して売却しな ければならない。売値を指定している余裕がなくなり、何が何でも売り切らなければならない。売り方としては、最悪の手法である。
そんな最悪の売り方を何回か自分も過去に経験してきた。でも、大抵1〜2週間内には市場が回復基調に乗り、次の暴落の日までそのマージンによる 強制的な売りの苦味を忘れてしまう。それでも、最近はマージン額には常に ゆとりを設けて、ギリギリではなく何時株価が下落しても、資金不足には至らないだろうと思われる程度に止めてきた。
去年の秋頃から、今年の3月上旬までナズダックが順調に急騰を続けている間、借金を大いに利用して、筆者は素晴らしい業績を上げたのだ。市場 が25%膨張すると、自分の口座は50%も増えている、といった経験を何回も続けた。我が投資経歴中でも最高に楽しいシーズンであった。まさにマージン利用が大いにメリットを生んでくれた時代だった。
ところが、ところが。実情はガラリと逆転換した。ご存知のように3月初め以来のナズダックの暴落曲線は、急激であり暴力的なまでに酷いものだった。マージンの金額は抑えながらも、大きく下がる度に自分は「安い」と勘違いして買い込んだ。それが皆裏目に出るから、マージン額は増える、自己資本は縮小する、という赤字の雪だるま式膨張を繰り返したのだ。と言うわけで、ほんの数週間の内に我が自己資本は、4分の1(75%の損失)に減ってしまった。今回の体験は余りにも厳しく、しばらくはショック状態だった。が、先週ようやく市場も落ち着きを取り戻したので、より長期的な自己反省の機会ができた。
マージンは下落市場では利用すべきでない:
今考えれば当然のことなのだが、マージンの利用価値は市場が上向きの時に限る。ピークに近いと感じたら、あるいは下落の兆候が見え始めたら、急速にマージンからは手を引く。それまでに借金で稼いできた含み利益は現金化して、さっさと立ち去ることだ。ある日借金も含めて買い込んでいながら翌日状況が変化したと見たら、積極的に売りに回る。分岐点が何時やってくるかは、誰も予測できない。ある一時点を境に、「買い」の姿勢から「売り」の姿勢に180°方向転換するのである。その身軽さは、これだけ市場の振動が激しくなると、これは護身術の一つとして備えておかざるを得な い。現在我々が身を置いているベア・マーケット(下落市場)では、マージンは一銭とも利用すべきでない。ダウンサイドのリスクを膨張する愚策は避けたいものだ。
それを自分は十分意識していなかった。證券会社から現金不足の督促が来ない程度に抑えておけば、また市場が回復してくれると軽く見ていた。ベア・マーケットとは恐ろしいものだ。買えば買うほど、自己資金が減っていく。しかも、借金していると、その減少分が2倍、3倍に膨れ上がる。
ベテランの投資家にはすでに衆知の事実なのでしょうが、筆者はここでしっかりとこのレッスンを学んだつもりです。勿論、市場のボトムが認められれば、それこそ今までの損失を挽回すべく、借金(マージン)も大いに利用して見返りの膨張を計ろうと狙っていますが。自分はまだ、怖さが認知できないバカ者なのか、それとも生来の楽観主義者なのか。投資業績がいずれは判断してくれるでしょう。
アメリカの技術革新と経済拡張はまだまだ続く:
今回のナズダックの下落を指して、「それ見たか。バブルが崩壊しただろう」とこれまで悲観的な予測をしてきたバリュー投資家達が、その声を高めている。確かに、ナズダックのテクノロジー株は過剰評価されていた感触はある。また、まだ適性評価がどの程度なのか、ボトムが見えていないのも事実である。
が、インターネットを中核にしたアメリカの技術革新と経済の拡大がここで顕著に鈍化するとは思えない。この技術改革の流れは株式市場の一時的な揺れに左右されるような貧弱なものではない。10年間つづいているアメリカ経済の拡大基調は、そのスピードが減速することはあっても、ここで不景気に落ち込むとは思えない。基本的には健全な成長が続く。各産業界の大手企業の収益が順調に拡大していることがその証拠だ。
従って、株式市場も長期的には回復基調に戻るだろう。それが、何時始まるかは市場動向を観察していれば数字が教えてくれるはずだ。
今後の推薦銘柄:
まだナズダックの下落が始まって6週間しか経っていません。しばらくは横ばい状態を続けながら、ボトムが確認できるまでは、現金保守の姿勢で待機しましょう。まだ売り切れていないというのが、大方の専門家の見方です。今週の値動きは警戒心をもって注目して行きましょう。ナズダックだけでなく、ダウやS& P の指標が大きく上昇して、しかも取引量が大きく増加する日がラリーの始まりです。その後、また数日時間をかけて、さらに2回目のアップの日にボリュームも増加したなら、回復基調に乗ったことが確認されます。それから買い込んでも決して遅くありません。早く飛び込んで時期尚早、また大波に飲み込まれて赤字を出すことだけは避けましょう。これ以上、ケガをしないように。
現在筆者が、値動きを見つめながら次の買い込みの機会を狙っている銘柄は以下の通りです。いずれも、3月のピーク以来、30%〜50%落ち込んだ所で様子を伺っている状況です。
ADIC, AMCC, CHKP, CSCO, JDSU, MVSN, NTAP, QLGC, QCOM, PWAV, PMCS, SDLI, ZOMX, SEBL, XLNX, INFY, SILI, VRTS, BOBJ, KEI, CREE, FELX, ITWO, MERQ, PLMD, QGENF, TLGD といった所。これら27企業の中から、お気に入りの10銘柄程度に絞って長期線の坂を上ろうと計画しています。
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本文筆者の昨年度(12月末)の投資業績は、282%でした。2000年1月1日から今日(4月20日現在、すべて現金化した時点)までの成績は -16.79 % です。(自己資本金額を基準にした比率です)(去年のキャピタルゲイン・タックス額を差し引きました)。
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