成長分野で優れた成績を収めている企業を投資対象に選ぶ。それが投 資の基礎戦略である。ところが日本では、どれが優秀な会社なのか、業績数字を信用できる環境がまだできていない。日米間の株式市場を比較する限り、日本市場ではまず情報開示が進んでいない。国全体の経済成長率が低 い。その上、成長産業であるハイテックが十分に育っていない。という諸理由から、為替振動というリスクを負いながらも、米国企業への投資の方がはるかに健全な見返りを期待できる、と結論づけられる。本コラムの存在理由がここにある。
注目すべき指標:
株主にとって情報開示が如何に大切か、対象銘柄に関して売買の決定を下す
際に必ず分析すべき一式の数字がある。先ずは毎四半期の収益動向、そして
売上高、コスト、その他財務諸表にある数字だ。これらが信用できない限
り、危なくて投資などできない。過去に粉飾決済があったりした会社は、こ
の市場ではなかなか立ち直れない。さて、アメリカ企業については開示され
る情報は膨大な量である。が、自分で投資銘柄を選択して、適性価格を査定
するためには最低限、業績の伸び率を確認することだ。 上で述べた売上高と利益高の成長率、そして1株当たりの利益高の成長率(EPS=Earnings Per Share )が満足できる健全なものであるか否か、を確認することだ。EPS という用語は覚えておいて欲しい。今後しばしば言及され る概念です。
何を基準に投資対象を選択するか。売上が増加し、利益も増加、そして株当
たりの収益が伸びている。しかも、3年、5年と一貫して伸びている銘柄を
見つけることだ。本メールマガジンにて、今までもそういった優秀な銘柄を
紹介したし、また今後も紹介していくつもりだ。また読者の皆様が独自に研
究される場合、必要なデータはこれも今後随時紹介する各種投資家用の文献
データやウェッブサイトの資料で容易に発見できる。
対株価利益率(Price/Earnings Ratio)指標:
EPS と同様に大切な指標は、P/E 比率( P/E Ratio)と呼ばれる数値で、あ
る時点での株価が利益と比較して、どれだけの倍率で評価されているかを示
す。株価が過剰評価されているか、正当であるかを判断する材料になるとさ
れている。株価を一株当たりの利益額で割り算した数値で、これは投資のタ
イミングを計るのには有効な指標でもある。どんなに優れた銘柄を発見して
も、その株価が成長率から計算して過大評価されている場合には、より正当
な値段まで下がるのを待たねばならない。
筆者はつい最近まで、このP/E 比率には必要以上に依存し過ぎたと反省して
いる。安いと言う理由で、この比率が低いものを購入してきた。つまり、成
長率に比して株価が安い、チープな株式を選んできたのだ。が、この2,3ヶ
月間に覚醒したことは、P/E 比率が低い株価は確かに「安い」という印象を
与える。が、それにはそれなりの理由があり、株価が安い会社は投資対象と
しては避けたほうが良いという、従来の感覚の正反対の意識に到達したの
だ。業績が悪いか、成長率が鈍化しているから株価が下がり、従ってP/E 比
率も低くなるのである。
適正な株価の判断材料:
適正な株価を我々素人が判断するのは危険極まりない。と、今は自覚してい
る。P/E 比率は重要な指標であるが、これが低いから将来高くなると予測す
るのは大きな間違いの元になる。この点、特に要注意だ。適正な株価は、自
分で判断するよりも市場に任せた方が安全だ。つまり、値上がりする株の株
価は値上がりする理由を背景に持っていることを想定することだ。したがっ
て、値下がりしている株価は、さらに値下がりするか、せいぜい横ばいを維
持する可能性が高い。値上がりする株は、さらに高まる 傾向が強い。
市場の動向には逆らわない:
優秀な会社で、高品質の製品を持ち、経営者もベテランでしっかりしてい
る。が、株価が動かない。というような銘柄を筆者は過去に、半年や1年間
以上も保有してきた。自分は高く評価しているのに、株式市場はそれに気付
いてくれない。と、不満たらたら。そのような態度は、市場の動向に逆ら
い、議論をふっかけている投資家の姿だ。自分もそんなことを体験してき
た。市場動向に議論をふっかけるのは個人の自由というものだが、投資家と
しては大きな赤字を出す危険に満ちた態度なのである。
さっさと、喧嘩するのは辞めて、市場が示している方向に合流することだ。
下がる株は早いところ売却して、より優れた銘柄に資金を移動すること。業
績が良く、また株価が上昇している銘柄をキャッチすることだ。アメリカで
は過去半世紀間、株式取引の原則として「バイ・ロー、セル・ハイ」という
スローガンが横行してきた。つまり、安く買って高く売る。当然のように聞こえるが、このバイ・ロー、つまり比較的安い株式を購入するというのは、ここではっきり誤りであると 宣言できる。 正しい基本原則は「バイ・ハイ、セル・ハイアー」である。
投資銘柄選択の基本ステップ:まとめてみよう
1)成長率が高い産業界に着目する。
2)その産業界で、特に売上高だとか利益増加率が一貫して高い銘柄を探す。
3)株価が、利益増加率に比較して正当であるか否かを判断する。
4)P/E 比率は参考になるが、その低さはバーゲンを意味しないことに注意する。
5)株価が安い銘柄は、それなりに安い理由がある。さらに値下がりする可能性が大であることに注意する。
6)優秀な銘柄は値上がりしているはずだ。成長率と照合しながら、購入してさらに値上がりを期待するのが正しい戦略だ。
7)市場の株価動向と議論したり喧嘩をしたりする態度は捨て去る。市場は常に正しいのです。自分の方が正しいと思っていると大きな損失を出します。
今回の推薦銘柄:ティッカー・シンボルと、会社名、それにウェッブサイト
のチャートへのリンクを提示する。
AMCC: Applied Micro Circuits Corp. http://finance.yahoo.com/q?s=amcc&d=b
高性能、高バンドのシリコン半導体メーカーで、ディジタル・コミュニケーション・ネットワーク構築のインフラを提供する有望会社だ。9月末までの半 年間で売上は、前年同期比で41%増加、利益は84%の増加を見ている。 従業員400人未満の零細優秀企業である。
PRGN: Peregrine Systems http://finance.yahoo.com/q?s=prgn&d=1y
IT インフラの管理を可能にするソフトのメーカーで、過去2,3年の間に企業買収合併により大きく変身している。9月末までの6ヶ月間の売上高は前年 同期比で100%以上もの上昇を見せている。が、利益額は過去の企業買収のコ ストが残っていてまだ赤字状態だ。その赤字額は最近大きく減っている。株価動向が見せているように、将来性は高い。
オダニ・リサーチはファイナンシャル・アドバイザーでもありませんし、特
定の銘柄や證券会社の利益を代表するものでもありません。投資家に代って
ポートフォリオを運営することもしていません。コミッション収入など一切
ありません。本コラムは一般投資家の参考になる情報を提供する「独断と偏
見に満ちた戯言」であるとご理解ください。ここで提供する情報はすべてオ
ダニ・リサーチ社の社長兼主任研究員オダニ・アキラによる10年間以上の
アメリカ株への投資経験に基づいたものです。 読者の投資成績が良くなっても悪くても、責任は負いません。
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