昭和20年に生まれた私は、自分の将来を心配する母親から、繰り返し繰り返し
「あきらは頭が良くないんだから、人一倍頑張らないと、おいていかれますよ」と教
えられた。自分は「ダメ」なのかなという一抹の不安を常に感じながら、競争してき
た。結果として、特定の人生の道標に到達しても満足できず、後ろから追い抜かれる
のでは、という不安が先立つ生活をしてきた。
筆者がアメリカに惹かれる魅力は、個人主義と背合わせの関係にある自己の尊厳を大
切にする文化だ。30年間の在米生活で学んだ最も貴重なレッスンは「自分を大切に
することは誤ったことではないのだ」という確信だろう。自分の利益を守る、「当然
の権利」は主張する。危機に直面したら人の助けを求める。自分を含め、愛し、愛さ
れることは基本的に許される。いや鼓舞激励されるべきことなのだ、ということに気
がついた。
自分をあるがまま、無条件で受け入れられないことほど、悲しいことはない。自分を
信じられないことほど、残念なことはない。自分を愛せないことほど大きな悲劇はな
い。自分を大切にしない人が、他人を大切にできるわけはない。世の中で犯罪を犯す
者に、健全な自尊心を持つものなどいない。同様に、自分を大切にしている人々こそ
が世の中に最も大きな貢献をできる。
子供の時に、自分に自信を持てないような否定的なお説教を聞いてきたからと言って、諦める必要はない。今からでも自尊心を育てよう。健全な「セルフ・エスティーム」の持ち主には次のようなギフトがもたらされる。合理性/現実性/直感を活かせる能力/創造力/独立心/柔軟性/変化に処する能力/過ちを認めて修正する意欲/寛容性/人と協力する技能。
自己を大切にして生きていると、同じように前向きのエネルギーに満ちた健全な自尊
心の持ち主達が回りに集まってくる。自分を愛し、家族・友人を愛し、結果として愛
に満ちた世界が生まれる。相乗効果を期待しながら、皆様もご自分を大切にしてくだ
さい。
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